後輩のハヤトから突然の告白を受けたエン子。
翌日、エン子はアケミとともにバー「ラビリンス」を訪れた。
エン子「京子様~! 助けてください」
京子「昨日の合コンね。成果はあったの??」
エン子「今まで全然恋愛対象に見ていなかった会社の後輩ってありだと思いますか?」
エン子「いや、あの最初に素敵だなと思っていた人が便所男で……」
京子「わかった、落ち着きなさい。全部昨日の出来事を話しなさい」
私とアケミは昨日の合コンについて京子様に話をした。
合コンは盛り上がり、とても楽しかった。アケミは代理店勤務のヒロ君という男性と親密になったこと。
リョウさんという男性にひかれて自分から肩ズンしたこと、
でも、なかなか勇気が持てず会社の後輩のハヤトで実験をしたこと。リョウさんにトイレでいきなりキスされそうになったところをハヤトに助けられたこと。そして告白されたことを……
京子「ふーん。なかなか面白い展開になってきたわね」
京子様の目が光る。
京子「美山エン子! あなたは99人の雑魚ハントはもう終わりよ」
アケミ「ち、ちょっと、私はどうなるんですか??」
京子「アケミちゃんは卒業まではもう少しね。
まず、そのヒロ君。もう少し吟味する必要があるわ。3回デートをしなさい。それからもう1人くらい本命になりそうな人がほしいわね。そういう人が現れたら卒業よ」
アケミ「ヒロ君、なんで吟味が必要ですか??」
チャラい男の友達はチャラいの法則!
京子「その合コンに便所男が1人混ざっていたのよね。そういう合コンの場合は、他にも便所男や身体目的の男が混ざっている場合があるわ。だから、3回はデートを重ねなさい」
京子「ヒロ君がダメだったときはかなり落胆すると思うわ。だから、早急にもう1人見つけるの。大丈夫。少しずつだけど前進してるわよ」
エン子「京子様! ここまで来たらもう少し頑張ります!」
アケミ「エン子の次のステージへの挑戦、心から応援するわ」
京子「そうね、まず後輩ハヤト君よね」
エン子「あの、ハヤトは大丈夫なんですか? 一応便所男の友達ですし」
京子「大丈夫よ。会社の先輩に遊び目的で手を出してくる男はほとんどいないわ。ハヤト君は本気でエン子のことを想っているはずよ」
京子「ただ、ポイントはアナタが恋愛相手として見れるかどうか」
エン子「そうなんです。今まで全くそんな感じじゃなかったし。会社でもどんな顔していいか」
エン子「それに、外務省にお勤めの平川さんとデートの約束をしたばかりで……」
京子様の目がまたキラリと光る。
京子「ようやく、面白い展開になってきたわよ」
京子「まずはデートをして見定めてきなさい」
エン子「あ、あの。私の選び方は分かったんですが、
失敗しないデートのための法則などあれば教えていただきたいんですが」
京子「しょうがないわね~! デートの法則、いわゆるデートテクニックを、教えてあげるわよ」
とにかく聞いて聞いて相手のことを知れ。さすれば相手の求めているものが見えてくる
京子「あたりまえだけど自分のことばかりべらべらしゃべる女はダメ! まずは相手がどんな人で何を求めているのかを知ることが大事よ」
京子「エン子ちゃんは確か営業事務よね? じゃあ、営業で目標の数字を達成するまでに大事なことって何かわかる?」
エン子「んーー……まずはお客様に会ってもらうことですか?」
京子「ま、正解ね。営業のプロセスは全部で6つあるわ」
1. 事前準備
2. 相手に接触
3. ヒアリングしてニーズをつかむ
4. 提案して商品を売りこむ
5. 相手に決断を迫り、買ってもらう
6. その後も商品を買い続けてもらう
アケミ「なんか婚活に似てる!」
エン子「あ、確かに! 事前準備で変な男に引っかからないようにして……。自分がどんな男のスペックに弱いかをよく考えて。沢山の男の人に会った」
京子「そうね、雑魚ハントはまさに1、2のためのもの。営業の第一歩は自分の売るものをよく理解してだれに売るかを決めることよ。婚活も同じ! 色んな相手に会って、自分という人間のウリをきちんと作って、それをだれにアピールしたいかを探す」
京子「デートは3、4番だと思っているの。相手の話をよくよく聞いて相手が求めているものと自分が持っているものを照らし合わせる作業よ」
京子「そして、私とあなたがいればこんなに楽しく、明るい未来が見える。だから私と結婚を前提に付き合うべきだとプレゼンするのが4番よ」
エン子「何かプレッシャーです」
京子「難しい言い方をしたけどだれでも愛されたい、好かれたいと思えば相手が求めていることをしてあげたいでしょ? それを的外れではなく実行すればデートは成功するわ」
エン子「わかりました。とにかく相手の話をよーく聞いて、相手が何を求めているかを考えて行動します」
こうして、私はまず平川さんとデートをすることになった。
平川さんとのデート当日。
朝9時に三軒茶屋で待ち合わせしてドライブに出発した。
平川「今日は日帰りで熱海でいいかな?美味しいお寿司を食べにいこう」
エン子「うれしいです! 熱海よく行くんですか?」
平川「ああ。実は学生時代の親友が熱海の寿司屋の息子で、そいつの親父さんに美味しい寿司をごちそうになってたってわけだよ」
エン子「そういう男同志の友情っていいですね。何かあこがれる」
エン子「そのお友達もお寿司屋さんになったんですか?」
平川「いや、そいつは銀行マンになったよ」
(平川さんってきっとすごくいい大学なんだろうな~)
(いや、ダメだ。今日はスペックの質問ではなく本能に触れるようなことを聞き出そう)
エン子「今から平川さんにいっぱい質問してもいいですか?」
平川「あはは。エン子ちゃん面白いな~。どうぞどうぞ」
エン子「好きな音楽は? 好きな色は? 好物は先に食べる? 残す?」
エン子「今まで一番思い出に残っている映画は?」
私はどんどん平川さんを質問攻めにした。
平川さんは運転をしながら私の質問にすべてきちんと答えてくれた。
(平川さんて知れば知るほど誠実な人だな)
お寿司屋さんに到着した私はあまりの美味しさに感激していた。
エン子「美味しい! 生まれてはじめてです」
平川「でしょ。ここのお寿司は本当に美味しいんだ」
店主「佑真が女の子を連れてくるなんて珍しいな」
平川「親父さん、余計なこと言わないでよ」
エン子「聞きたいです。佑真さんはどんな学生だったんですか??」
店主「真面目な男だよ。うちの息子はバカ息子だけど、佑真が大学4年の夏休みにアルバイトしてくれてな。休憩時間、こいつビールケースに腰かけて本読んでエスプレッソ飲んでるんだよ! 思わずオレはお茶を吹いたな」
エン子「あはは! すごいですね~」
佑真さんは恥ずかしそうにしていた。
帰り道、パーキングエリア。
平川「休憩しよっか」
トイレに行った帰りにスターバックスを見つける。
(平川さんに何か買っていこう)
(さっきお店の親父さんがエスプレッソって言ってた)
迷わずエスプレッソとカフェラテを買って車に戻る。
平川「ちょうど今コーヒー飲みたいって思ってた。なんでオレの好みがわかったの??」
エン子「ふふ。秘密です」
(よかった。いっぱい質問したからこそ平川さんを喜ばせることができた)
平川「いや、本当に今日はすごい楽しい」
(平川さん私の好感度を上げてくれている気がする。これも京子様のおかげだ)
翌日。
ハヤトとの映画デート。
京子様から新しいアドバイスが届く。
褒めるのは最初のデートが効果的
心理学では身近な人よりも他人に褒められた方がうれしいという結果がでているの。
だから、最初のデートは相手を褒める最大のチャンス。
今回は後輩君であまり褒めてあげる機会もないから一人の女性として相手を褒めてあげなさい。褒めるテクニックは客観的な事実を交えながら「あの人がこう言ってたよ。私もそう思う~」のような褒め方が効果的。
男はギャップで堕ちる
職場で見せる顔と全然違う顔を見せなさい。そして、言葉の内容とテンションを逆にする。こうやって相手の心をひきつけドキドキさせることができるわ。
映画デートのあと、ハヤトの行きつけの焼き鳥屋さんに行った。
エン子「今日の映画、ずーーっと観たかったの。誘ってくれてありがとう」
エン子「しかもプレミアムシートで観れるなんて、はじめてだよ」
ハヤト「そんなに喜んでもらえるなんて……まじで良かったです」
ハヤト「エン子さん、好きとか言いながら怖いの我慢してたでしょ?
怖いときにオレの方にだんだんよってきてたもんね」
エン子「ちょっと、恥ずかしいから言わないで」
(ギャップ効果。普段お姉さんぶってるからちょっと弱いところを見せてました)
ハヤト「しかも、最後ちょっと泣いてたでしょ。クールに見えるから意外だった」
エン子「あー、この焼き鳥美味しい。上野毛にこんな美味しい焼き鳥屋さんがあったんだね」
ハヤト「ここ完全予約制で、エン子さんと来たくて、デートのOKもらう前にフライング予約しちゃいました」
エン子「ハヤトってうちの会社のお客様満足度1位だって部長に聞いたことがある。今日それがすっごくわかった気がする」
ハヤト「何か照れます……」
エン子「いや、本当に。ずーっと観たかった映画を観れて、こんなに美味しい焼き鳥とビール。幸せすぎ~」
ハヤトはうれしそうに微笑んでいる。
(ハヤトとのデートも平川さんとのデートも心から楽しい)
(どうしよう。私どちらかを選ぶなんてできるのかな)
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